MITに学ぶ, 起業家と投資家でwin-winな大学の仕組み作り

はじめに

東京で大学生をやっていたとき、興味さえあれば、起業セミナーや授業・コンペなど、起業について考える機会はそこかしこに散らばっていたように思う。中にはチャンスを掴む人もいて、実際、同期や先輩が起業したという話もちらほら聞く。

なぜ大学から新しいビジネスがどんどん生まれる仕組みが必要なのか、という議論はまた別の機会に置いておいて、実際日本の大学発スタートアップの資金調達額は近年大きく伸びているようである。それ自体はとても良い兆候だけれども、海外の例えばアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の起業家たちは毎年桁違いの雇用と売上を生み出している。彼らのエコシステムは一体どんな仕組みの上に成り立っているんだろうか?彼らのシステムの良いところを取り入れて、日本の大学発ベンチャーの規模を倍増させることは可能なんだろうか?

 

 

 

MITの起業インパクト

少し古いデータになるが2014年のMITによるレポートによると、MIT卒業生が創設した現存する会社は当時3万社もあり、それらの会社の売上合計はなんと年間1.9兆ドルにのぼるそう[1][2]。

1.9兆ドルというのは当時のGDP 9位のロシア(2.079兆)と10位のインド(1.899兆)の間というのだからすごい。

MIT卒業生の25%は起業経験があり、そのうち40%の人は複数会社を起こしたという数字も報告されている。さらに、アメリカのスタートアップの10年後の生存率35%に比べてMIT卒業生によるスタートアップの10年後の生存率は70%であるらしく、ほんとに!?という感じの数字である。

ちなみに最新版のレポートも2019年に出ているようだが私にはアクセスがなかった😭。現在はそれからさらに伸びているそうだからますます規模が大きくなっているだろうと推測される。

 

ちなみに「大学発」のベンチャーはどうなのかということで調べてみると、2017年のForbesの記事にてMIT発ベンチャーは現在2.5万社ありそれらによる売上は2兆ドル以上になると言及されている[3]。起業家を産む仕組みが大学に備わっているのだろう。

 

日本の大学の起業事情は?

2014年に産業競争力強化法によって国立大へのベンチャーキャピタル出資が解禁されて以降、日本の大学発スタートアップは企業数も資金調達額もどんどん増えている[4]。

経済産業省(METI)のまとめによると、日本の大学発スタートアップは東京大学発が最も多く、2020年では全体の11%で323社と報告されている[5]。売上についてはあまり良い数字を見つけられなかったけれど、例えば参考までに、2018年の大学発ベンチャーの売上高合計は2,327億円だと帝国データバンクが報告している[6]。

つまり、国内の大学が生み出す新しいビジネスは、近年増えているもののMITなどの大学と比較すると全く規模が小さいのだ。一体なぜこれだけの規模の差があるのか。

 

MITと東京大学の予算の違い

もちろんMITの起業カルチャーはあらゆることに起因するだろう。優秀でイノベイティブな学生たち、充実した起業プログラム、講師、研究成果、ベンチャーキャピタル。。。

どんな企業でも、経営判断はステイクホルダーの意見に委ねられる。つまりお金を出資してくれる人たちの意見で何にお金を使うか決まる。では大学に出資しているのは誰なのだろう?

ベンチャー企業を日本で一番多く輩出している東京大学を見てみると、まずもちろん国立大学なので、国からの補助金をもらっている。補助金が40%くらいで、授業料や大学病院からの自己収入が25%、産業連携等研究費・寄付金が25%弱という内訳だ[7]。当たり前だが国立大は国の方針を遵守する義務がある。

ではMITはどうだろう。MITは私大なので、国からの補助金はないわけだけれども、収入をどこから得ているのだろう?高額な授業料から賄っているのだろうか?

ちなみに2018年の予算を比較するとMITは約3529億円[8]、東大は約2560億円となっている[9]。

実は、MITの授業料は全体の約11%と主な財源ではなく、産業連携等による研究費が25%、そして寄付・投資が32%と最も多くの割合を占めている[8]。しかも投資・寄付額は年々どんどん収入全体に占める割合が増えているそうである[8]。

つまり、MITは研究の産業連携が強く、産業への還元率が高いために投資家たちからの強力なサポート体制が整っているのだ。財務事情から、投資家と起業家とのWin-winな関係が大学のシステムに組み込まれていることが伺える。

 

私たちにできることは?

投資家たちを大学に呼び込む仕組み、そして大学がそのお金をどんどん産業に還元していく仕組みを作っていくことがイノベーションの土台になるだろう。本来は、仕組みが整えば大学は大変魅力的な投資先のはずだ。特にテック企業は、投資した多くのスタートアップが失敗してしまったとしてもそれらを全て挽回してくれるようなものすごいユニコーン企業が一定確率で産まれる。国立大であれば国立大ならではの基礎研究も磨きつつ、大学が産業・社会とのインタラクションを増やしていけるよう動いていくことが重要だ。こういった動きが、際立って低い日本の大学職員の給料や博士人材の活用率の低さといった問題の抜本的改革にも繋がっていくだろう。

産業連携研究の促進、学生のインターンを促進する仕組み作り、社会人が大学に戻ってきやすい仕組み作り、一つ一つの取り組みが今後重要になっていきそうだ。

 

参考文献

[1] New report outlines MIT’s global entrepreneurial impact | MIT News | Massachusetts Institute of Technology

[2] http://web.mit.edu/innovate/entrepreneurship2015.pdf

[3] Inside An MIT Incubator: What It’s Really Like To Learn Entrepreneurship At MIT

[4] https://initial.inc/articles/startup-newrules-20200228

[5] 大学発ベンチャー実態等調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

[6] 大学発ベンチャー企業の経営実態調査(2018年) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]

[7] https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400157741.pdf

[8] MIT’s budgetary process | The Tech

[9] https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400122665.pdf

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