Yの話

先日、地元の懐かしい友人から突然連絡がきた。

友人は中学の部活同期で、就職して上京していたらしい。同じく中学部活同期で、地元の大学で美術を学んでいたYちゃんが、六本木で個展をひらくことになったという。

久々に連絡をもらえたこともとても嬉しかった上に、同期が活躍している知らせにもびっくりしたし、嬉しかった。

それで先週末、Yちゃんの個展に行ってきたのである。

ところでこのYちゃんが、とっても素敵な人だから、ちょっと紹介したい。

 

“え!うそ来てくれたの!ちょっと二人とも久しぶり…!”

黒いワンピースに身を包んだYは、昔と変わらない、大人っぽく響く声とちょっと困ったような笑顔で、私たちを向かい入れた。

肩でざっくりと揃えられた髪は毛先がワインレッドに染まっていて、耳には大きなピアスをつけている。

”さっきまで、〇〇とか来てたんだよ。さんざんお金の話して帰っていった(笑)”

なんと中学同期が他にもたくさん訪れていたという。成人式以来会ってない、もう会うこともないのかも、なんてうっすら思っていた懐かしい人たち。

Yは、中学時代から、男子からも女子からも、とても人望が熱い人だった。

きっと、センスのよいユーモアと、本気で友人を思えるところと、たまに垣間見える繊細な感性を、備えているからだろう。

そんな彼女は、元気なイメージと裏腹に、とても繊細な絵を描く。

 

彼女は、一枚一枚全然違う個性を持った木の素材を使って、はんだやバーナー、色鉛筆を使って作品を描く。素材の色や模様を引き立てながら、表現される世界。

 

絵画でも写真でも音楽でも文章でも、芸術的な言語で何かを表現する人たちはかっこいい。美しいとか面白いとか、そういうことを感じさせるものを生みだせる心が美しく素敵だし、そういうツールを持ち合わせているってなんて自由なんだろう。

そもそも、そういった”対象”を描こうとするにはそれ相応の心の準備と関心が必要で、殆どの人は関心を持つ余裕のないそういったものに、丁寧に向き合えるってすごい。

 

“メインの作品のこの女性、Aをモデルにしてるんだよ”

Aも同じ部活の同期で、引退試合で自分とペアを組んでいた子だ。Yは、本当に友人をよく見て、愛を持って生きてるんだな…。

“これ、二人からの差し入れ。てか、今度同窓会しようよ。Yが呼べば絶対人集まるから。”

“任しといて(笑)。てゆうか〇〇も同じお店のお菓子くれたんだけど。考えること、一緒か(笑)”

 

建物を出て、私たちはなんだかすごく明るい気持ちになって、Y変わってなかったねー、と笑いあった。

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